

酸素濃縮装置コラム
column【第3回】酸素濃縮装置(酸素濃縮器)の種類

第1回では酸素濃縮装置の役割や在宅酸素療法(HOT)の概要について、第2回では酸素濃縮装置の構造や酸素を作り出す仕組みについて解説しました。
酸素濃縮装置には大きく分けて「据置(設置)型酸素濃縮装置(SOC: Stationary Oxygen Concentrator)」と「携帯型酸素濃縮装置(POC:Portable Oxygen Concentrator)」の2種類があります。どちらも空気中の酸素を濃縮して患者さんへ供給するという基本原理は同じですが、使用する場所や目的、機能には大きな違いがあります。
本記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリット、どのような方に向いているのかについて詳しく解説します。
据置(設置)型酸素濃縮装置とは
据置型酸素濃縮装置は、自宅での使用を目的として設計された酸素濃縮装置です。AC100Vの家庭用コンセントに接続して使用するため、バッテリー切れを気にすることなく24時間連続で酸素を供給できます。
本体は高さ50〜70cm程度、重量は約18〜40kg前後と大型ですが※、その分、安定した酸素供給能力を備えています。一般的には毎分5L程度までの酸素流量に対応し、機種によっては7Lや10Lの酸素を供給できる製品もあります。
また、多くの据置型酸素濃縮装置では酸素流量を細かく設定でき、加湿器を接続できる機種も多く採用されています。そのため、長時間かつ高い流量での在宅酸素療法が必要な患者さんに適しています。
在宅酸素療法では現在でも最も普及しているタイプであり、自宅で安定して酸素療法を継続する中心的な装置となっています。
最大酸素流量に比例して本体が大きくなる
据置型酸素濃縮装置は、最大流量5Lクラスでは重量約20kg前後の機種が多い一方、7Lや10Lクラスでは約25~40kgの機種もあります※。また本体サイズも、高流量モデルでは高さ60cmを超える製品が多く見られます。このように、最大酸素流量が大きいモデルほど、本体サイズや重量も大きくなる傾向があります。これは各メーカーの製品仕様を比較しても確認できます。
※製品のサイズ、重量は国内主要メーカーの現行製品情報を参考
携帯型酸素濃縮装置(POC:Portable Oxygen Concentrator)とは
携帯型酸素濃縮装置(POC)は、外出や旅行など、自宅以外でも酸素療法を継続するために開発された酸素濃縮装置です。
最大の特徴は、バッテリーを搭載していることです。電源のない場所でも使用できるため、通院や買い物、散歩、旅行など、活動範囲を大きく広げることができます。
近年は小型軽量化が進み、重量がバッテリーを装着しても2kg未満の機種も登場しています。ショルダーバッグやバックパックに収納して持ち運べるため、身体への負担も少なくなっています。一部のメーカーでは、自宅では据置型酸素濃縮装置として使用し、専用カートに載せることで携帯型として使用できる機種もあります。
また、多くの携帯型酸素濃縮装置では、呼吸同調技術(デマンド方式)が採用されています。患者さんが息を吸う瞬間だけ酸素を供給することで、限られたバッテリー容量でも効率よく酸素を利用できるよう工夫されています。
一方で、機種によっては連続流量に対応していないものもあり、供給できる酸素量にも上限があります。そのため、すべての患者さんが携帯型だけで生活できるわけではありません。
バッテリー性能の向上により半日以上使用できる機種も
携帯型酸素濃縮装置で患者さんが気になる点のひとつが、バッテリーの駆動時間です。使用可能時間は機種やバッテリー容量、酸素流量の設定などによって異なりますが、近年では標準バッテリーでも数時間の連続使用が可能な製品が多くなっています。さらに大容量バッテリーを装着することで、半日以上の連続使用に対応した機種も登場しています。メーカーによっては、条件によって最大16時間程度の使用が可能な製品もあり、外出や旅行など長時間の利用にも対応しやすくなっています。
据置(設置)型と携帯型の違い
両者は優劣ではなく、それぞれ役割が異なります。
| 項目 | 据置型 | 携帯型 |
|---|---|---|
| 重量 | 約18~40kg | 約2~4kg |
| 電源 | 家庭用電源 | バッテリー・AC・DC |
| 使用場所 | 主に自宅 | 自宅・外出先 |
| 酸素供給方式 | 連続流量が中心 | 呼吸同調方式が中心 |
| 連続使用時間 | 電源があれば24時間 | バッテリー容量による |
| 持ち運び | 不可 | 可能 |
| 飛行機 | 不可 | 対応機種あり |
| 主な用途 | 長時間の在宅使用 | 外出・旅行・移動 |
(国内主要メーカーの現行製品情報をもとに作成)
据置型は「安定した酸素供給」、携帯型は「行動範囲を広げること」を重視して設計されていることが分かります。どちらが優れているというものではなく、患者さんの病状や生活スタイルに応じて選択されます。また、在宅酸素療法では両者を組み合わせて使用するケースも少なくありません。
据置型酸素濃縮装置の多くは、なぜ連続流量方式なの?
呼吸同調方式(同調モード)は、患者さんが息を吸うタイミングで設定した酸素流量を供給する仕組みです。自宅で使用する据置型酸素濃縮装置に搭載されていてもおかしくない機能ですが、なぜ採用されていないのでしょうか?
理由は大きく2つあります。1つ目は、自宅では酸素を節約する必要がないからです。据置型酸素濃縮装置は家庭用電源で使用するため、携帯型酸素濃縮装置のように限られたバッテリー容量の中で酸素供給を効率化する必要がありません。そのため、呼吸同調方式を採用するメリットは比較的小さいと考えられています。
2つ目は、就寝時の使用には連続流量が適しているからです。据置型酸素濃縮装置は自宅で24時間使用するものです。就寝中は呼吸が浅くなったり、口呼吸になったりすることがあります。その結果、鼻カニューラによる吸気を十分に検知できず、設定どおりの酸素供給が行えない可能性があります。そのため、自宅で長時間使用する据置型では、睡眠中も安定して酸素を供給できる連続流量方式が広く採用されています。
以上の理由から据置型酸素濃縮装置では連続流量方式が現在も主流となっています。一方、携帯型酸素濃縮装置では、限られたバッテリーを有効に活用するため、呼吸同調方式が広く採用されています。
据置(設置)型酸素濃縮装置のメリット・デメリット
メリット
- 24時間連続使用できる
- 高い酸素流量に対応できる
- 酸素濃度が安定している
- 加湿器を接続できる機種が多い
デメリット
- 重量が重く持ち運べない
- 停電時はバックアップ機器が必要になる
- 外出時は携帯型酸素濃縮装置や酸素ボンベを併用する場合がある
携帯型酸素濃縮装置のメリット・デメリット
メリット
- 外出先でも酸素療法を継続できる
- 旅行や公共交通機関も利用しやすい
- 近年は小型軽量化が進んでいる
- 呼吸同調技術により効率よく酸素を供給できる
- 生活の自由度や活動範囲が広がる
デメリット
- バッテリー残量を常に管理する必要がある
- 長時間外出時は予備バッテリーが必要になる
- 機種によって供給できる酸素流量が異なる
- 患者さんの病状によっては使用できない場合がある
携帯型酸素濃縮装置が変えた「外出できない」という常識
かつて在宅酸素療法では、自宅では据置型酸素濃縮装置を使用し、外出時には酸素ボンベを持ち運ぶことが一般的でした。酸素ボンベは残量に限りがあるため、外出時間を気にしながら使用する必要がありました。
一方、携帯型酸素濃縮装置(POC)は、周囲の空気から酸素を生成しながら使用できるため、バッテリーがある限り継続して酸素を供給できます。また近年は小型・軽量化や長時間駆動が進み、通院や買い物だけでなく、旅行や趣味など、活動範囲を広げやすくなりました。
携帯型酸素濃縮装置の進歩は、単に「持ち運べる酸素濃縮装置」が登場しただけではありません。患者さんが自分らしい生活を続けるための選択肢を広げ、生活の質(QOL:Quality of Life)の向上にも大きく貢献しています。
どのような人に向いている?
据置型が向いている方
- 自宅で過ごす時間が長い
- 高流量の酸素療法が必要
- 睡眠中も長時間酸素療法を行う
- 安定した酸素供給を優先したい
携帯型が向いている方
- 仕事や買い物など外出する機会が多い
- 旅行を楽しみたい
- 公共交通機関を利用することが多い
- 身体活動を維持したい
実際には「据置型だけ」「携帯型だけ」というケースはそれほど多くありません。多くの患者さんは、自宅では据置型酸素濃縮装置を使用し、外出時には携帯型酸素濃縮装置や酸素ボンベを利用しています。生活スタイルや病状に合わせて複数の機器を使い分けることが、在宅酸素療法では一般的です。
外出・旅行・飛行機ではどう違う?
外出時は携帯型酸素濃縮装置の利便性が大きく発揮されます。近年の携帯型酸素濃縮装置は、自動車用DC電源や家庭用AC電源の両方に対応した機種が増えており、移動中でも充電しながら使用できる製品があります。
また、一定の条件を満たした携帯型酸素濃縮装置は航空機内での使用も可能です。
現在ではFAA(アメリカ連邦航空局)の基準を満たし、各航空会社が使用を認めた機種であれば、機内でも使用できます。
ただし、航空会社ごとに事前申請や医師の診断書、必要なバッテリー容量などの条件が定められている場合があります。飛行機を利用する際は、搭乗前に航空会社へ確認することが重要です。
なお、携帯型酸素濃縮装置を安心して使用するためには、外出前の点検も大切です。バッテリー残量やカニューラに折れ曲がり・破損がないかを確認し、長時間の外出や旅行では予備バッテリーも携帯すると安心です。旅行や長時間の外出では、目的地で充電できる環境があるかどうかも事前に確認しておくと、より安心して行動できます。
最新機種の進化
近年の酸素濃縮装置は、酸素を生成する基本原理こそ変わらないものの、利便性や快適性は大きく向上しています。
例えば、
- 約2kg前後まで軽量化された携帯型酸素濃縮装置
- 呼吸状態に応じて酸素供給を制御する高度な呼吸同調技術
- 長時間使用できるリチウムイオンバッテリー
- Bluetooth通信などによる遠隔モニタリング
- 静音化設計による快適性の向上
- 航空機内での使用を想定した専用機能
など、患者さんの日常生活を支えるさまざまな技術が採用されています。
これらの技術により、在宅酸素療法を続けながら、仕事や旅行、趣味などを楽しめる環境が以前より整ってきています。
酸素濃縮装置は「高性能な機種」を選べばよいわけではありません
酸素濃縮装置には3L機、5L機、7L機などさまざまな種類があります。また、低流量・低濃度処方に適した機種も存在します。
これは、患者さんごとに必要な酸素流量や治療内容が異なるためです。必要以上に高流量の機種を使用することが目的ではなく、医師が処方した酸素流量を安全かつ安定して供給できることが重要です。
そのため、酸素濃縮装置は「性能が高い機種」を選ぶのではなく、「自分の処方に適した機種」を選ぶという考え方が基本になります。
よくある質問
Q. 据置型だけで在宅酸素療法を行うことはできますか?
はい。自宅中心の生活であれば据置型だけで十分な場合もあります。ただし、外出する機会が多い方では携帯型酸素濃縮装置や酸素ボンベを併用することがあります。
Q. 携帯型だけを使用することはできますか?
病状や必要な酸素流量によって異なります。携帯型酸素濃縮装置だけで生活できる患者さんもいますが、高流量が必要な場合は据置型との併用が推奨されることがあります。
Q. 外出中にバッテリーが切れたらどうなりますか?
長時間外出する場合は予備バッテリーを携帯し、必要に応じて家庭用電源や車載電源を利用します。旅行や飛行機を利用する際には、あらかじめ十分なバッテリーを準備しておくことが大切です。(各航空会社のホームページ参照)
Q. 据置型と携帯型どちらを選べばよいのでしょうか?
必要な酸素流量や病状、生活スタイルによって適した機種は異なります。医師や在宅酸素療法の担当スタッフと相談し、自分に合った機種を選ぶことが重要です。
まとめ
据置(設置)型酸素濃縮装置と携帯型酸素濃縮装置は、どちらも空気中から高濃度酸素を生成する医療機器ですが、それぞれ役割が異なります。据置型は自宅で安定した酸素供給を行い、携帯型は外出や旅行など日常生活の活動範囲を広げることを目的として開発されています。多くの患者さんは病状や生活スタイルに応じて両者を組み合わせて使用しており、それぞれが在宅酸素療法を支える重要な役割を担っています。
近年では小型軽量化や呼吸同調技術、通信機能などの進歩により、患者さんの生活の質(QOL)は大きく向上しています。医師や医療スタッフの指導のもとで適切な機器を選択し、正しく使用することが、在宅酸素療法を快適に続けるためのポイントです。


