酸素濃縮装置コラム

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【第2回】酸素濃縮装置(酸素濃縮器)の仕組み

2026年08月12日

【第1回】では、酸素濃縮装置の役割、酸素濃縮装置が必要となる疾患、在宅酸素療法(HOT)との関係、酸素濃縮装置を導入する手順などについて解説しました。
本記事では酸素濃縮装置の機能と構造、どのようにして酸素を作り出すのか、実際の使用方法など、一般的な酸素濃縮装置の仕組みを詳しく説明します。

酸素濃縮装置の機能と構造

酸素濃縮装置の機能

酸素濃縮装置は装置周辺の空気を本体に取り込み、空気の大部分を占める窒素を選択的に除去することで90%以上の高濃度な酸素を生成し、酸素吸入を必要とする患者さんに供給する医療機器です。メーカーによっては「酸素濃縮器」と呼ばれることもあります。

酸素濃縮装置で生成された酸素は、患者さんの状態に応じて必要な吸入量をボタン等で設定できるようになっています。また同調機能を備えた機種では患者さんの吸気を検知し、呼吸に合わせて酸素を供給、呼吸が検知できない時に必要な量の酸素を自動的に供給できる機種もあります。また機種によっては加湿された酸素を供給できる製品もあります。

酸素濃縮装置は電源を利用して酸素を生成するため、自宅内で継続的な酸素供給を行うことができます。また携帯型の機種では外出時にも使用することが可能です。その手軽さから酸素濃縮装置は在宅酸素療法(HOT)などにおいて最も使用されている医療機器です。

酸素濃縮装置の構造

酸素濃縮装置の本体は室内の空気を取り込む「空気取入口」、ホコリやゴミを取り除く「防塵フィルター」、空気を圧縮する「コンプレッサー」、空気から窒素を吸着する「ゼオライト吸着筒」、生成された酸素を一時貯蔵する「酸素タンク」、生成された酸素以外の空気を排出する「排気口」、そして吸入する酸素の流量などを設定する「操作パネル」などで構成されています。

そして患者さんが使用する構成品として、作り出した酸素を吸入するためのチューブである「カニューラ」、家庭用電源から電気を取るための「ACアダプター」、電源がない場所で使用するための「バッテリー」や充電のための「バッテリーチャージャー」などがあります。また携帯型酸素濃縮装置(POC: Portable Oxygen Concentrator)では、外出時などに本体を持ち運ぶための「ショルダーバッグ」や「バックパック」、車等で使用するための「DCアダプター」などが付属品として用意されている機種もあります。

これらの構成品が連携して動作することで、空気中から高濃度の酸素を生成し、患者さんへ供給しています。

●酸素濃縮装置と各部名称 当社製品例

酸素供給の仕組み

酸素濃縮装置は窒素を除去して高濃度の酸素を作り出します。その工程は大きく4つに分かれます。

①空気の取り込み・圧縮

室内の空気を吸気口より吸い込み、防塵フィルターでホコリやゴミを除去した後、コンプレッサーで圧縮します。

②窒素を除去する

圧縮された空気をゼオライト吸着筒に送ります。ゼオライトには窒素を吸着しやすい性質があり、ここで窒素を選択的に除去します。

③酸素を濃縮する

窒素を除去することで高濃度酸素が生成されます。高濃度酸素はタンクに一時的に貯蔵され、必要なタイミングで供給できるよう調整されます。

④患者さんへ供給する

医師から指示された酸素流量に合わせて操作パネルを設定し、カニューラを通して酸素の供給を開始します。

カニューラから出る酸素だけを吸っているわけではありません

酸素濃縮器を使用したことがない人が勘違いしやすい点として、カニューラから出る酸素だけを吸うわけではないということです。在宅酸素療法において患者さんは、カニューラから供給される酸素と同時に、周囲の空気も一緒に吸い込んでいます。

これは、カニューラが口や鼻を覆うマスクとは異なり、鼻の穴に軽く装着して使用するためです。そのため呼吸の際には、供給される酸素と周囲の空気が混ざった状態で肺に取り込まれます。酸素濃縮器から高濃度の酸素が供給されることで、吸い込む空気全体の酸素濃度が高まり、体内へ取り込まれる酸素量を増やすことができます。在宅酸素療法は「酸素だけを吸う治療」ではなく、「不足している酸素を補う治療」と理解するとわかりやすいでしょう。

なぜ高濃度酸素を作れるのか(PSA方式)

PSA方式とは

PSA方式はPressure Swing Adsorptionの略で、日本語では「圧力スイング吸着」といいます。「分子ふるい」という非常に小さく均一の穴があいた多孔質材料を使用して、特定の分子だけを分離・吸着したり、脱着したりして、目的のガスを取り出す技術です。
酸素濃縮装置では「ゼオライト」という分子ふるいを使用し、空気から窒素だけを吸着させて取り除き、高濃度酸素を作り出します。PSA方式は空気中から酸素を生成できるため、外部から酸素を補充することなく継続的に酸素を供給できる特徴があります。

ゼオライトとは

ゼオライトは1756年に発見されたアルミノケイ酸塩のことで、「沸石」とも呼ばれる天然鉱物です。結晶内に0.2~1.0ナノメートルという非常に微細な空孔が網の目のように張り巡らされており、分子の大きさで分類する「分子ふるい」効果や、空孔に存在する陽イオンの作用によって特定の分子を吸着させるなど、様々な特性を持っています。
ゼオライトは世界各地で産出される天然ゼオライトと、人工的に合成される人工ゼオライトがあります。その数は250種類以上にも及び、水質浄化、土壌改良、廃油処理など幅広い用途に使用されています。
酸素濃縮装置内においては、ゼオライトの結晶構造に存在する陽イオンが窒素分子を引き付ける性質を利用することで高濃度酸素の抽出を実現しています。

吸着と再生の仕組み

酸素濃縮装置に取り込まれた空気はコンプレッサーにより加圧され、ゼオライトが設置された「ゼオライト吸着筒(シーブベッド)」というシリンダーに送られます。シリンダー内で空気は高い圧力でゼオライトに押し付けられ、その結果窒素だけがゼオライトに吸着します。吸着しなかった酸素はゼオライトの細孔をすり抜け一時貯蔵用のタンクへと送られます。

次に窒素をたくさん吸着させたゼオライトはシリンダー内の圧力が下がることで、窒素を脱着(再生)させ排気口より排出します。こうしてまた何も吸着していないゼオライトの状態に戻ります。これらの吸着と脱着のプロセスを繰り返し行うことで、継続して高濃度酸素を生成できるわけです。

酸素濃縮装置にはゼオライトが設置されたゼオライト吸着筒が2基備わっており、それぞれが交互に酸素抽出のプロセスを繰り返すことで、効率の良い酸素供給を可能にしています。もし吸着筒が1基しかなければ、窒素を放出して再生している間は酸素を作ることができません。そこで酸素濃縮装置では通常2基の吸着筒を用意し、一方が窒素を吸着している間にもう一方を再生する仕組みを採用しています。この切り替えを数秒単位で繰り返すことで、酸素供給を途切れさせることなく連続運転を実現しているのです。

このようにPSA方式では、ゼオライトによる窒素の吸着と再生を繰り返すことで、空気中から連続して高濃度酸素を生成しています。続いては具体的な酸素濃縮装置の使用方法についてご説明します。

酸素濃縮装置の一般的な使用方法

<使用の前に>

製品の取扱説明書をよく読みましょう。付属品はきちんと揃っているか、吸気口にフィルターが正しく装着されているか、本体、電源コードやカニューラに傷みや破損がないかなど、使用前にチェックしましょう。

<電源投入>

製品の仕様(規格)に適合した商用(家庭用)電源に接続し、本体の電源を入れます。携帯型酸素濃縮装置の場合は、使用前にバッテリー残量も確認しておきましょう。

<流量設定>

操作パネルで医師より指示(処方)された酸素流量を設定します。

<酸素吸入>

カニューラを鼻に正しく装着し、酸素を吸入します。酸素流量は自己判断で変更せず、必ず医師の指示(処方)に従って使用してください。また吸入中は本体の吸気口や排気口をふさがないようにしましょう。

<アラーム確認>

一般的な酸素濃縮装置には、機器に異常があった場合などに知らせるアラーム機能が備わっています。何らかのアラームが鳴った場合は取扱説明書などで確認し、必要に応じて酸素濃縮装置のサービス(販売)業者に連絡しましょう。

<日常点検>

日頃より本体に破損や異常がないかのチェックや、吸気フィルターの清掃などを行いましょう。フィルターの清掃時期や交換時期については取扱説明書に従ってください。またカニューラが折れ曲がったり、穴が開いていたりしないかも確認しましょう。
長期間使用しない場合は、取扱説明書に従って保管してください。バッテリーを搭載した機種では、直射日光の当たらない高温・多湿にならない場所で保管することが推奨されています。

テクノロジー

呼吸同調技術

呼吸同調技術は、呼吸の有無に関わらず常に酸素を供給するのではなく、息を吸うタイミング(吸気)をセンサーで感知し、設定された酸素量を供給するシステムです。息を吐くときは酸素供給が停止するため、効率よく酸素を利用できる特徴があります。この技術は携帯型酸素濃縮装置を中心に採用されています。

一方、酸素ボンベでは通常、酸素が連続して供給されるため、酸素を効率的に使用したい場合は「呼吸同調器(デマンド式酸素供給装置)」を別途接続して使用します。呼吸同調器を利用することで、酸素の消費量を抑え、ボンベを長持ちさせながら効率的に酸素を供給することができます。

このように、従来の呼吸同調技術は吸気のタイミングに合わせて酸素を供給する仕組みですが、近年ではさらに呼吸状態の変化に自動で対応する機能を備えた機種も登場しています。運動時や階段の上り下りなどでは呼吸回数や呼吸パターンが変化することがありますが、一部の機種ではこうした変化を検知しながら酸素供給を制御する技術が採用されています。

小型軽量化

酸素濃縮装置は技術の進歩とともに小型軽量化が進んできました。かつては在宅酸素療法において据置型酸素濃縮装置と携帯用酸素ボンベを組み合わせて使用することが一般的でした。しかし、携帯型酸素濃縮装置の登場により、酸素を生成しながら持ち運ぶことが可能となりました。

小型化を実現するためには、酸素を生成するゼオライト吸着筒やコンプレッサーの高性能化に加え、電子制御技術やバッテリー技術の進歩が重要な役割を果たしています。また近年では呼吸同調技術などの採用により、限られた装置サイズの中で効率的な酸素供給を目指した設計も行われています。

現在では本体とバッテリーを含めて約2kg前後の機種も登場しており、酸素療法を継続しながら外出や移動を行うための選択肢が広がっています。

静音化技術

酸素濃縮装置は空気を圧縮させるコンプレッサーを使用するため、一定の作動音が発生してしまいます。かつての機種では日中の使用は問題なくても、就寝中などは音が気になってしまう方も少なくありませんでした。しかし現在は各メーカーが静音性の向上に取り組んでおり、従来機種と比べて運転音を抑えた製品が数多く販売されており、一般的な酸素濃縮装置の運転音は通常40~50dB程度等(設定流量による)※です。

これは冷蔵庫の作動音や図書館の中にいる程度の音の大きさです。それでも気になってしまうという方は、酸素濃縮装置(対応機種に注意)を部屋の外に設置し、延長チューブを使用して酸素を吸うことで音が気にならなくなります。

またフローリングの床などは装置の振動が伝わりやすいため、防振マットなどを装置の下に敷くと良いでしょう。静音化技術の進歩により、現在では就寝時を含め、日常生活の中でも以前より快適に使用できる酸素濃縮装置が増えています。

※主要メーカー発表の酸素濃縮装置の情報をもとに当社調べ

バッテリー性能の向上

主に携帯型酸素濃縮装置ではリチウムイオンバッテリーが採用されており、年々、小型・軽量化と長時間駆動が進んでいます。近年では、酸素流量の設定や使用条件によっては15時間以上の連続使用が可能な機種も登場しています。
また、バッテリー性能の向上だけでなく、呼吸同調技術やコンプレッサーの高効率化などにより、消費電力を抑えながら安定した酸素供給を実現する機種も増えています。

航空機対応技術

2000年代初頭にアメリカ連邦航空局(FAA)が一定の基準を満たす携帯型酸素濃縮装置の航空機内での使用を認めたことをきっかけに、航空機への対応を前提とした製品開発が進みました。現在では、FAAの基準を満たし、各航空会社が使用を認めている機種であれば、機内で携帯型酸素濃縮装置を使用することができます。

航空機内は気圧や電源環境が地上とは異なるため、近年の携帯型酸素濃縮装置には、そのような環境でも安定して使用できるよう設計された機種が多くあります。また、一部の機種では、航空機内での電力使用を考慮した専用モードや制御機能を備えた製品も登場しています。

但し、飛行機を利用する際は、利用予定の航空会社が指定する条件や、使用できる機種、必要なバッテリー容量などを事前に確認しておくことが大切です。

遠隔モニタリング

近年では、Bluetoothなどの通信機能を搭載し、酸素濃縮装置の使用時間や設定流量、機器の動作状況などを専用アプリやクラウドを通じて確認できるシステムも登場しています。
これらのシステムでは、患者さん本人や家族のほか、必要に応じて医療従事者や酸素供給事業者が機器の使用状況を把握できる場合があります。これにより、日常的な機器管理や適切な使用状況の確認、保守・点検などに活用されています。

このように酸素濃縮装置は、酸素を生成する基本原理は変わらない一方で、小型軽量化や静音化、バッテリー性能、通信機能などは年々進歩しています。これらの技術開発により、在宅酸素療法をより快適に継続できる環境が整いつつあります。